梅文湯呑 銘「曙の香」

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは…」清少納言が『枕草子』でつづったような、夜明けのありさまを思わせる一品。
暗緑色の表面には雪にも似た白梅を描きこみ、地を彫って枝をあらわす。内側は打って変わって柔らかな白色となっており、明けゆく空のようである。

大抵の土はそのまま胎土や釉薬として使えるというのが半泥子の持論であった。この湯呑は下部に胎土が見えるが、轆轤で挽いたら手が痛くなってしまいそうな砂粒混じりの土でできている。